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人はお菓子を買いに行くとき「お菓子」そのものだけでどこのお店に行くかを判断しているのではない。実は、建物・照明・ショーケース・ディスプレイなど、お菓子以外のお菓子を取り囲む様々な要素がお菓子やお店の印象を大きく左右する。それらの要素をトータルデザインし「売れる店作り」、「感動する店作り」を行い洋菓子業界の中でも高い評価を得ているのが神田美穂さんである。 今回は最近手がけた茨城県の洋菓子店サンタムール(2007年9月にオープン)のオープン前にお話を伺ってきた。
今まで数多くの店舗デザインを手がけてきましたが、実は最初から今のような仕事をしていたわけではないんです。 大学卒業後、就職したのは地元広島の自動車メーカーでした。事務職として入社しましたが、ある時社内向けの新車のコマーシャルフイルムの制作・編集を任される事になりました。 新車がどんなユーザーをターゲットにしているのか、社内の人に分かりやすく伝えるためのコマーシャルです。 どうやって作ったかというと、まず何十本もの映画のビデオをチェックしてその中から新車のイメージに合う人物を選びだします。次にその人がどんな生活をしているのかを設定します。例えばどんなインテリアが好きで、どんなレジャーを楽しんで…という感じです。そうして一人の人間のライフスタイルを表現したフイルムを作り上げていくのです。 こういう仕事は初めての経験でしたが、やってみるととても楽しかったですね。 店舗開発の仕事と関係がなさそうですが、今思えば「物」を売るのではなく「物を取り囲む雰囲気や空間」を作り出すという点では現在の仕事と根底は一緒だなと感じます。 フイルム制作を通して、ライフスタイルをデザインすることの面白さを感じました。そしてそれを映像で形にするのではなく、実在する空間で作りたいと思いました。もともとインテリアデザインに興味を持っていたこともあり、建築物やインテリアを通してライフスタイルの提案や空間作りをしたいと強く感じるようになったのです。そのため会社を退職しインテリアや建築を勉強するため上京し専門学校で3年間学びました。 卒業後は設計事務所や店舗開発を手掛ける会社に就職し、ホテルやアパレル関係の店舗、大型スーパーや百貨店、飲食店など様々な商業施設のデザイン設計に携わるようになりました。
お店の入り口にある門。よく見ると、上の部分には天使の姿と店名「Saint Amour」の装飾が。▲
現在G-Planningでは店舗デザインをはじめ、そしてお店の空間を構成する様々な要素を手がけています。 店舗デザインは一番大きな仕事ですが、仕事の流れはこんな感じです。 最初にオーナーさんとお会いして、どこにどのくらいの規模で建てるのか、どんなお店にしたいのかイメージや要望を伺います。 デザインに関しては、例えば「フランスの田舎風な」とか「落ちついた北欧風」という風にオーナーさんが抱いている大まかなイメージを伺います。 それからプランの作成に取りかかります。デザインについては基本的にまかせていただくことが多いので、お客様のイメージや要望を具体的にどんな形にしていくのか少しずつ固めながらデザインをおこしていきます。 そこで気をつけていることは、デザインが先行してしまわないということです。あくまで洋菓子店の主役は「お菓子」です。お菓子がよりおいしそうに見え、思わず食べたくなるためには、どういう空間を演出するかということを常に念頭に置いてデザインしていきます。
▲お店の庭には、かわいらしいお花や、天使のオブジェ、クマの人形などおとぎ話のような世界が広がっている。
デザインに関する仕事を目指す方は、様々な作品集や有名な建築家の手がけた作品、インテリアの素敵なお店などを見に行くと思います。 もちろんそれも大切な事だと思いますが、私はすでにできている物を見るのではなくそれを取り巻く空気感を感じる事が一番大切だと思います。
例えば素晴らしい建築物があったとするとそれだけを見るのではなく、一歩ひいてその周りの空気を感じることです。その建物がそこの土地にどう溶け込んでいるのか、目に見えない部分を体験して欲しいなと思います。