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vol.008 コンフィチュール アトリエスタッフ

最近よく耳にする「コンフィチュール」。フランス語で「ジャム」を意味する言葉です。鎌倉にあるロミ・ユニ コンフィチュールは、「お菓子みたいなジャム」を数多く作り出していることでも有名コンフィチュールの専門店です。アトリエスタッフの津田さんに、今までの経験や、コンフィチュールを作る仕事、そして職場の環境についてうかがいました。

子供の頃、母親がアップルパイやシュークリーム、プリン等いろんなお菓子を作ってくれました。それを真似してよく姉とお菓子作りをしていましたね。

それでも、お菓子の道に進むつもりはありませんでした。高校卒業後は、絵が好きだったこともあり東京の美術大学に進学しました。
でも、勉強していくうちに、「デザインを仕事にするのは何かが違うな。」と思い、その後地元の福岡に戻りいろんなアルバイトをしていました。

そのアルバイトのひとつですが、カフェベーカリーで接客アルバイトをしていました。そこは、パンを作る厨房が併設されたカフェでした。
私は接客も好きでしたが、パンを作る様子を見ているうちに、すごく面白そうだと思ったのです。今までパン作りはほとんど経験がなかったのですが、店長に何度もお願いして製造へと異動させてもらいました。

実際にパン作りをしてみると、すごく楽しかったです。今まで接客や販売のアルバイトばかりやっていたけど、「私は、作ることがすごく好きなんだ!」ということに気付きました。

そこでの仕事も楽しかったのですが、カフェで働きたい、カフェのお菓子を作りたいという気持がだんだんと強くなってきたので3年働いた後、新しくオープンするカフェのキッチンで働くことになりました。ちょうどカフェブームがやってきた頃です。

そのカフェでは、比較的自由に任せてもらえたので、スタッフと相談しながらカフェのスイーツメニューを考案しては、いろいろなお菓子を作っていました。

そうしていくうちに、きちんとお菓子の勉強をしたいと思い始めました。福岡のケーキ屋さんもいくつかまわったのですが、自分が働きたいと思うお店がなかったことと、大学生の頃東京に住んでいて東京が好きだったこともあって、28歳で上京しました。
特にあてがあったわけではないのですが、「まずは東京に行こう!」という勢いで上京しました。


氏名 津田敦子
年齢 31歳
職業 ロミ・ユニ コンフィチュール
アトリエ責任者

20才

美術大学に入学
21〜
23才
様々な接客等のアルバイトをする。
23〜
26才
カフェベーカリーでパンの製造に就く。
26〜
28才

カフェのオープニングスタッフとしてスイーツを担当。

28〜
29才
ル・コルドンブルーでお菓子を学びながらアルバイト。
30才 ロミ・ユニ コンフィチュールに入社
ロミ・ユニ コンフィチュールのHP
ロミ・ユニ コンフィチュールではスタッフを募集しています。詳しくはこちら

お菓子の勉強をしたいと思っていたので、お菓子教室や、専門学校を色々調べて、ル・コルドン・ブルーの菓子講座に入学しました。

ル・コルドン・ブルーでは、初級、中級、上級のコースがあるのですが、私は上級コースまで受講しました。
今までやったことのない様なチョコレートや飴細工、マジパンなどを扱うこともあり、とても面白く楽しい経験でした。

その一方で、ストレートに専門学校に入って修行している若い子達にはどうしても追いつけないという焦りがありました。少しでもその差をうめるために、お菓子の本を読んで勉強したり、自宅でチョコレートのテンパリングの練習をしていました。

▲ロミ・ユニ コンフィチュールの外観。小窓から見えるかわいいディスプレイが目をひく。  
その後、お菓子の仕事をしたいと思っていたので、お菓子教室の助手や、フレンチのケータリングの手伝いをしたり、大手の工場で製造の仕事をしていました。

工場での仕事は、毎日朝早くから夜遅くまでのハードな生活でした。体力的にも精神的にもきつかったのですが、「ケーキを作る仕事はハードなのが当たり前で、それを乗り越えなければいけないんだ。」という思いこみがありました。
それでも毎日くたくたになりながら「何かが違う...」と違和感がありました。そして「今やっていることは自分が本当にやりたいことなのか?」と疑問に感じてきました。

そんな日が続いていたある休日に、鎌倉に遊びに行ったのです。確か10月あたりで、紅葉やお寺を見に行こうと思っていたのです。そして鎌倉といえば「ロミ・ユニ コンフィチュール」。雑誌などでよく見て、気になっていたお店なので、一度行ってみたいな、という軽い気持でお店に行きました。
お店の前のボードには、「お菓子みたいなジャム」というロミ・ユニ コンフィチュールのコンセプトが。▲

▲店内には、かわいらしい雑貨のディスプレイや、毎年デザインの変わるバッグ(写真左)がおいてある。

お店は、とても素敵で、「あ〜。かわいいな。かわいいなぁ。」なんて思いながら見ていたのですが、ふと「スタッフ募集」の小さな張り紙が目に飛び込んできました。

今まで、ロミ・ユニ コンフィチュールで働きたいと思っていたわけでもなかったのですが、その「スタッフ募集」を見た瞬間に「あっ!」と思いました。

それでも冷静に考えてみようと思い、お店を一度出て、近くのカフェで考え込みました。本当は観光で鎌倉にきたのに、それどころじゃなかったですね(笑)。頭の中で「どうしよう。どうしよう...」と自問自答を繰り返していました。

そう考えているうちに、今やっている仕事は、自分のやりたいことと違うし、そこのケーキが作りたいわけでもない。そして一日中箱(厨房)の中で働いている生活に疑問がありました。でもコンフィチュールの仕事って今まで考えたことも無かったので、「まずは話を聞くだけ聞いてみよう!」と決心して、再度ロミ・ユニ コンフィチュールに向かいました。

▲毎月第1金曜日は、「量り売りの日」。瓶を持参すると量り売りでコンフィチュールが購入できる。(種類は限定。)
その時、お店にろみさん(ロミ・ユニ コンフィチュールの責任者・菓子研究家いがらし ろみさん)がいたので、募集について聞いてみました。突然話を聞いたのにも関わらずろみさんは、いろいろと一生懸命丁寧に説明して下さったこともあり、「ここで働きたいな。」と思いました。

その後、もう一度冷静に考えてみましたが、やっぱり「働きたい!」という気持が固まったので、履歴書等の必要な資料を送った後、面接を受けました。
その面接の際、ろみさんから仕事内容や、労働環境についての話をうかがいました。
お店の棚にずらーっと並んだコンフィチュール。定番ものから季節の限定商品まで多くの種類が並ぶ。▲

その話の中で、『長時間労働で、体力的につらくて辞めてしまう女性が多い製菓業界の現状をどうにか変えたい!それなら自分で女性が働き続けやすい場所を作ろう。』と考えてロミ・ユニ コンフィチュールを立ち上げたことなど、ろみさんの仕事に対する考えや、製菓業界に対する考えをいろいろと聞くことができました。

その時、私が今まで仕事に対してなんとなく悶々と感じていた事をろみさんが全て話してくれたように感じました。ろみさんの話を聞いているうちに、なおさら働きたい気持が強くなりました。

もちろんケーキを作る仕事は好きだったのですが、毎日の仕事に追われて体力的に疲れがたまってくると、無理がでてきて心や体が「作りたい」という気持に追いつかなくなってきていたのです。

そんな状態だったので、「仕事もきちんとやって、そして自分の生活も大切にする。」というろみさんの考えにとても共感できたし、自分ができる範囲で最上の努力が出来る仕事をしたいと思えるようになりました。
そしてロミ・ユニ コンフィチュールに入社し、コンフィチュールを作る仕事に楽しみを感じながら、心に余裕をもてる生活を送っています。



その日によって、仕事の担当が変わります。大まかに、コンフィチュールの炊きあげ、フルーツの準備、瓶の洗浄の担当に分かれています。

コンロは4つあるので、その日に炊くコンフィチュールはそれらのコンロを使って大きな銅鍋で炊きあげていきます。

新作を出すときには、必ずろみさんと一緒に煮詰め具合などをチェックしながら仕込みをします。炊きあがりのポイントは泡の大きさ、つやの状態、あくの出方、温度などで確認します。フルーツによっても様々な状態に仕上がるし、コンロによってもくせがあり、炊きあがりを見極めるのは難しいところです。

コンフィチュールを炊きあげた後は、手分けしてなるべく早く瓶に入れ計量をして、ふたをし金具でとめます。
瓶詰めしたコンフィチュールは、殺菌するために煮沸消毒をします。
消毒後は、瓶がかけていないか、きちんと密閉されているか等を確認して、ゴムがけ、ラベル付けをします。

▲季節限定の小布施栗とバニラのコンフィチュール。ひとつひとつ皮をむいた栗がバニラ風味の優しい味わいのコンフィチュールになった。

送られてきた状態の瓶には小さなほこりなどがついているので、洗浄が必要です。1日600個近くの瓶を洗浄するので、それだけでもかなり時間がかかります。瓶と瓶のふたを洗浄機で洗い、乾燥させる作業を行います。

フルーツの下処理については、前日に準備出来るフルーツの場合は皮をむいてカットして砂糖とまぶしておく事もあります。ただ、変色しやすいリンゴや、水が出やすいキウイなど前もって準備できないフルーツは、炊く直前に準備するようにしています。

それから、私はアトリエの責任者という立場なので、仕事全体を通してスタッフの皆がスムーズに仕事が出来るように指示をすることもあります。ただ、周りのスタッフはとてもチームワークがよく、私自身助けてもらうことも多いので、皆に支えられて仕事が出来ているという気持が大きいですね。

銅鍋を3〜4つ並べてコンフィチュールを炊いていく。▲


起床 6:30
家を出る 8:00
出社 8:45
仕込み

9:00〜12:30

昼食・休憩 12:30〜13:30
煮沸消毒、確認、包装等 13:30〜18:00
清掃 18:00〜18:30
帰宅 19:30〜20:00



コンフィチュールは旬のフルーツを使ったものが多いので、季節によってもメニューが変わり、いろんなフルーツに出会えるのがとても楽しみです。
この間は、ハーコット(あんず)をはじめて食べたのですがとてもおいしかったですよ。

そんな風に今まで食べたことのないフルーツに出会ったり、同じフルーツでも甘みや酸味、水分がいろいろと違うのでとても面白いなと思います。

それから季節ごとのメニューを考えるときに、自分のアイデアを提案することがあるのですが、そのアイデアがろみさんを通じてルセット(レシピ)となり、コンフィチュールができるととても嬉しいです。

そうやって、ただ作るという作業になるのではなく、自分自身が季節を感じながら「おいしいフルーツで、おいしいコンフィチュールを作ろう!」と素直に思いながら仕事をしているのでとても充実感があります。

▲秋の味覚「りんご」のコンフィチュールの仕込みのための準備。
そして、アトリエのスタッフ達には指導することもありますが、あまり厳しくするのではなく、できれば皆の意見をドンドン出してもらえるようなおおらかな環境にしたいと思っています。

例えば仕事のやり方や作業の流れ、どうやったらうまく仕事が流れるか等についてスタッフには自由に気兼ねなく意見を出して欲しいと思っているので、スタッフが意見や提案をしてくれた時には、とても嬉しいですね。

ただ、この職場で働いて1年近くになりますが、私自身まだまだ分からないこともたくさんあります。以前からいたスタッフに教えてもらうことも多く、毎日が勉強です。

コンフィチュールを炊き始めると厨房は熱気で包まれる。▲


将来的に「これをやりたい!」という形ははっきりしていないのですが、やはりお菓子に関わっていきたいな。と思っています。

自分自身がお菓子を食べることが好きだし、自分が作ったものを誰かが喜んで食べてくれるということがとても嬉しいのです。
昔から誰かが喜んでくれるということがお菓子作りの一番の原動力ですね。

ですからお菓子作りの仕事はこれからも続けていきたいと思っています。

▲炊きあがったばかりのコンフィチュールを瓶に入れ、ふたと金具を留めていく。


お菓子を作るという仕事にはいろんなアプローチがあると思います。その中から自分に合って、毎日続けられる仕事を選ぶことが大切だと思います。

私にとってコンフィチュールは遠い存在でしたが、実際働いてみたら、「おいしいものを作ろう」「おいしいものを食べてもらいたい」という姿勢はお菓子作りと同じでした。

それから健康管理も大切です。やはり体力が必要な仕事なので体が大切です。そして、自分の気持ちも大切にしてほしいと思います。
何が好きなのか、何がやりたいのか?そしてそれを毎日続けることができるのか?を考えて仕事を選んで欲しいと思います。

▲仕込みの予定を組み、最後はアトリエスタッフ全員で連絡事項の確認をし、18:30迄に仕事が終了。
そして、どこにいても、いくつになっても、「学ぼう」という姿勢が大切だと思います。

成長するには、常にどうやったらいいだろうか?と考えながら、どんどん学ぶことが大切だと思います。それを考えている人と考えていない人ではまったく違うと思います。

どの仕事にも共通して言えることだと思いますが、言われたこと、与えられた仕事をただやることは誰にでも出来ます。
経験や年齢に関係なく、誰からでも学ぼうという気持ちが大切だと思います。


shop data
店名  ロミ・ユニ コンフィチュール
住所 神奈川県鎌倉市扇ガ谷1-13-1
TEL 0467-61-3033
営業時間 10:00〜18:00
定休日 無休 ※12月26日(月)〜1月1日(日)は休業
URL http://www.romi-unie.jp/

 

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